引き続き教育格差の話

ここでいう、一種の精神論というのは、「正直な話、大学にいけないのを親の収入のせいにするのはそれこそ甘えだろう」*1といった、個人の努力に還元するような理屈を指す。

あれ、精神論とか本人の努力の話にされてしまったよ。私が言ったのは「低金利で借金すれば親の援助なしでも修学なのに、それをやらないで親のせいにするのはおかしい」といった話なんだけど、あれ、努力とか精神論かな?まぁ、そんな気もしないでもないけど。
とりあえず、反論として出てきて、その通りかも、と思ったのは。

  • 日本は就学補助の枠が小さく、必要な人間まで補助が行き届いていない。運良く就学できているのを認識すべし
  • 不況下では卒業しても就職できるとは限らず、大学4年間で数百万もの借金を抱えるのはハイリスクだ

かなぁ。

マクロな議論を行なう場合には、この経済力と学歴は相関するという認識を出発点にして議論を行なわなければ話にならない。この事実を認めたくないというのならば、ちょっと議論は成立しにくいと思う。また、あえて非標準的な学説や世の中に広まりきっていない学説を主張するのならば、その主張者こそがその論拠を示してくれないと、これはまたちょっと困る。

たぶん、相関に関しては誰も否定していない。相関が存在することを認めた上で、みんな「相関があるからといって因果があるとは限らない」と思っているのに、id:buyobuyo さんが、データの相関で説明を済ませようとしているように見える(のだが、それは気のせいかもしれない)。
で、なんだ、定説なら詳しい説明は必要は無いけど*1、定説でない主張は根拠無くとりあえず否定して根拠を要求か。なんだそれ。定説だとは言えども、人の意見を否定するんなら、自説のほうが妥当だという説明をすべきだと思うがなぁ。

ちょっと別の話。

2007年09月06日 buyobuyo マクロな制度の話をしているのに、ミクロな話をされても少し困ります。

個人単位で補助が十分か、貧困層でも安心して就学できるか、という話に興味がないのならスルーで。U.S. でも借金するかアルバイトしないと就学は無理な層がありそうだな、と思っただけで、特に id:buyobuyo さんに宛てたつもりはないです。
もし間違っていることを書いていたら指摘してもらえたらうれしいですが。とりあえず TA に関して再反論が無いのが気になるところではあります。

あと、ちょっと古いデータでの話だが、ちょっと面白いのを見つけた。

他方、本人教育から時間を逆行して左にたどると、父教育・母教育・父職という出身家族に関する3変数がある。ここでもまた、表3に示されているように、教育とこれらの3変数とのあいだの相関係数は大きいが、教育にたいする直接効果だけをとるといずれもさほど大きくなく、父教育(X1)からの係数が.201とやや大きいだけである。すなわち、教育が出身家族の地位によって直接に規定される度合はあまり高くない。教育を大きく規定している変数は、そういう出身家族の客観要因であるよりも、本人自身の主観的欲求たる教育アスピレーンヨン(X4)である(X4→X5の径路係数は368)。もちろん教育アスピレーンヨンも、X1→X4が.222、X2→X4が.156、X3→X4が.160と、ある程度みずからの出身家族の条件の影響を受けている。けれども、図1のモデルの範囲内では、教育アスピレーンヨンを大きく規定している先行変数は発見できなかった。したがって、出身家族にかかわる諸要因は、直接的にも、また教育アスピレーンヨンを介して間接的にも、教育水準を規定してはいるけれども、なおかつ教育は出身家族諸要因からある程度切れていると考えられる。このことは、教育が生得的決定要因からある程度まで自由である、換言すれば教育の機会均等がかなり実現されている、ということを暗示する。

最近だと変わっているのかな。

もうひとつ。

ドイツだと高等教育に関する家計負担はほとんど無く、進学資格を得れば自由に大学を選べるのに格差の世代間継承はあるらしい。日本とドイツじゃ全然状況が違うが、教育にかかる費用を減らせばいいという話でもなさそうだ。

*1:しつこいようだが、単純なデータの相関は説明にならない