投資効率とか統計の話とか

そうすか?東大は学費が安いから金のせいにするのがおかしいとか、現実を見てるとは思えない話が反論っぽく出てくると、なかなか素直に論は進められませんが。

どうも、反論の趣旨をよく理解しておられないようなので、ちょっと解説。繰り返しになるけども。
なんらかのデータ系列 A とデータ系列 B を見てみると、とても強い正の相関が見られたとする。で、A は B に影響を及ぼしているという結論はあまりにも早計なのはちょっと考えれば明らか。以下のいずれの可能性も否定できない

  • A が B に直接影響を及ぼしている
  • 別の要素 C が A、B それぞれに影響を及ぼすから結果として A、B 間に相関が見られる
  • 別の要素 D が A の影響を受け、D が B に影響を及ぼす

つまり、データの相関をいくら提示したところで、なんの論拠にもならないわけです。単なるデータの相関でいいならテレビが寿命を延ばすなんてことがいえてしまう。だから、データの相関だけでは不十分だし、別の説明変数を導入すれば変わるんじゃないか、という反論はごく当たり前の主張。
今回の例でいうと、それぞれたとえてみれば

  • 学力の向上にはお金がかかる
  • 親の学力が世帯所得と子供の学力に影響を与えるから、結果として世帯所得と学力間に相関が見られる
  • 名門私立などに通うと周りがみんな一流大学に行こうとがんばっているから、影響されて学習に対するモチベーションが高くなる。高いモチベーションが高い学力を生みだす。

とそんな感じ。3つ目のやつは kmaebashi さん猪股さん が主張されてことに近いと思う。id:buyobuyo さんは「精神論」と切って捨てるけど、モチベーション、士気といったものは結構重要な要素だよね。付け加えて言うなら、進学に必要な学力っていうのは金かければいいという話でもなく、結局は本人が努力しないとどうしようもないという面が多分にあるんじゃないかな。
もちろん、世帯所得が文化資本を形成し、さらにそれがモチベーションの形成に大きく寄与するという事実はあるかもしれない。その場合、就学補助や教育費負担額減少などが格差の解消に結びつくかといえばちょっと疑問が残る。

odz さんが投資という言葉を使っているところで、俺が気になっていたもう一つのポイントはここ。投資効率考えると、二種奨学金で借金こさえるのは実はそれはばくちというものではないのかって気がしちゃうのだ、日本の場合は投資効率が悪いから。(現実に使えたであろう)高卒で働いた場合の所得*2との比較を考えたら、リターンが無いリスク考えるとさらにしょぼしょぼですよ?更に言えば、院卒、博士卒で、確かかえって収益率は低下した気もするので、ここもリニアに上がるアメリカと比較するとアレゲポイントだと思うわけですよ。

うぃ?投資効率が低いと博打なんですか?私は最終的に収支がプラスで終わる確率が高くない場合を博打だと称するのだと思っていました。
それはさておき、U.S. でもキャリアの空白って、かなりクリティカルな問題ではあるらしいので確率でいえばあんまり変わらないかも知れない。とりあえず、新卒で普通に就職できればどちらの国でも元は取れているだろ、という気はするね。
ただ、まぁ、日本の場合、職業訓練は企業が内包してしまっている故に、本人の技術やら大学の教育内容なんかは無視される傾向にあって、要するに新卒就職を逃すと就職における武器がない、なんてことは言えるかもなぁ。

CO-OP について。
要するに part-time student だよね*1。さて、素朴な疑問なんだけど向こうの一流大学は大体私立だけど、この場合はどうか。年間 $20,000 を超える授業料を免除してもらうには成績優秀である必要がありそうだけど、そうでもないのかな。あ、Harvard は 低所得者層なら授業料免除 らしい。それとは別に高所得者層が奨学金を受けるという現実もあるしいけど*2
あと、日本でも長期履修制度というのを導入している大学もあって、これだと6年以上かけて4年生大学を卒業することになる。6年在学しても徴収される授業料は4年分。ただ、まぁ、かなり数が少ないからまだまだという感じは否めない。

*1:日本でイメージされる普通の大学生は full-time student

*2:http://sakamotoryu.blog34.fc2.com/blog-entry-1.html